FIELD.IOがミラーワールドに提示する、楽観的な未来のカタチ

※FIELD.IOは、2009年にロンドンで設立された実験的デザインのためのアートプラクティス。アートとテクノロジーを融合させ、没入感のあるオーディオビジュアル体験や、パワフルで新しいビジュアルコミュニケーションフォーマットを創造している
人工知能やWeb3.0を含む新しいテクノロジーは、しばしば、ユートピアと真逆のディストピア的な不安を抱かせることもあるが、同時に変革の機会を解き放つものでもある。今回はFIELD.IOのクリエイティブディレクター、ザンダー・マリットにインタビュー。これらの新興テクノロジーの持つ可能性と、未来についての楽観的な展望を育むためにクリエイティブが果たす重要な役割について語る。
フィジカルの世界と、デジタル世界を一つに
2022年、FIELD.IOはロンドンのバービカン・センターで展覧会『Together: The Distance Between (Us)』を開催した。ここでFIELD.IOは、インタラクティブな光の彫刻が展示室内で来場者を追いかけ、一人ひとりの位置をデジタルシーケンサーが光と音に変換するという企画を行なった。フィジカルな観客自身とバーチャルな世界を遊び心いっぱいに結びつけたのだ。マリットは「私たちの作品の多くは、フィジカルとバーチャルの2つの世界で、人間の体験の境目をいかに曖昧にできるか探求するものです」と説明する。
NIKEとのコラボレーションでもこのようなデータを使ったビジュアルインスタレーションが制作された。DXを推進するコンセプトストア「NIKE RISE」では、ソウルからサンタモニカまで世界各地の店舗が、デジタルツインを通じて相互にリンク。各店舗のデータはリアルタイムで組み合わされ、ユニークなビジュアル体験が生成される。「世界の異なる場所にあるスペースをリンクさせ、それらを相互作用させることで、まったく新しいユニークな体験を生み出すことができる。現在はそんなエキサイティングなことが起こっているのです」。
「現在、フィジカルとバーチャルの2つの世界の境界をどのようになくすかという領域にこそ、クリエイティビティを発揮させる可能性が広がっているのです」
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FIELD.IO – Together: The Distance Between (Us)
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FIELD.IO x Nike – Rise Digital Twin
創造的自由を可能にするツールとしてのWeb3.0、AI、メタバース
マリットはWeb3.0、AI、メタバースといった新しいテクノロジーのもっとも興味深い側面の一つとして、分散化と創造的自由を可能にしてくれる点を挙げる。彼は、スキルベースの社会からクリエイティビティベースの社会への転換を確信している。
「これらのテクノロジーは、アイデアがより大きな力を持ち、技術的なノウハウが創作の障害になりにくくなる領域を切り拓きます」
このシフトはすでに始まっている。マリットは「私たちがAIを用いて頭に描いているビジョンをコンピューターに伝えると、リアリティを持ったものへと転換させることができます。Robloxでは、コードの書き方を知らない子どもたちが新しいデジタル体験を創造しているのです」と指摘する。Salesforceの最近の調査によると、現在、Z世代の70%が日常生活ですでに生成AIを使用しているという。「私たちはすばらしいアイデアを生み出すことに、もっと集中できる未来に向かっています」とマリットはつけ加えた。
楽観主義の建築家としてのクリエイティブ
マリットによれば、FIELD.IOの原動力となる哲学は、つねに新興テクノロジーのポジティブな可能性を活用することだという。「少数の大企業が支配する状況のなかで、テクノロジーを使い、楽観的でオルタナティブな働き方をイチから提案することが、クリエイターとしての私たちの役割です」。
2017年、FIELD.IOはWiredとコラボレーションし、一連のビジュアルを通じてAIを解明した。この目的は、根本的に社会を変える力としてAIへの関心を喚起させることだった。さらに最近では、ゲーム、ウェルネス、物質性などのレンズを通して、新たなテクノロジーのポジティブな可能性を明らかにすべく、FIELD-Labという研究部門を設立。マリットはその意図を「結局のところ、継続的な実験とクリエイティビティを駆使して、エキサイティングな新しいビジョンを提供することがすべてなのです」と話した。
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FIELD.IO x Space 10 – Sonic Healing Lake
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Xander Marritt