GEMINI Laboratory GLOBAL DESIGN AWARDS 受賞作品

2024年5月9日、「GEMINI Laboratory」 初のデザインアワード『GEMINI Laboratory GLOBAL DESIGN AWARDS』の受賞作品が決定しました。
本アワードでは、バーチャルとフィジカルの地平が溶け合う時代における、新しいデザインのアプローチとアイデアを募集しました。世界各国のクリエイターから応募があり、マーク・フォスター・ゲージ、パメラ・ゴルバン、リアム・ウォンの3氏による選考の結果、7作品が受賞。作品のコンセプトと選評をぜひお読み下さい。
受賞者には賞金が贈呈されるほか、現在GEMINI Laboratoryが構築しているデータライブラリー「AltField」の公式データとして採用されます。今後の受賞者の活動とGEMINI Laboratory及びAltFieldの活動にご期待ください。
グランプリ
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タイトル|デジタル擬態
説明|植物擬態は進化生物学の概念であり、植物物体が生理的または形態的に類似したほかの生物に変化し、その適応度を高める現象を指す。植物の環境に対しての擬態は、AIが人間を模倣する相似性がある。AIが人間に模倣による図形と文字を創造すると植物が周囲の環境に対して擬態するようにマッピングし、これによりAI 進化と自然進化の間の共通性を検討する。だから私はコンピュータに植物をテーマに人間の創造行為を模倣させた。
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Instagram:https://www.instagram.com/manymany.bot/Behance:https://www.behance.net/aliciali4
審査員よりコメント:Mark Foster Gage|このプロジェクトは、デジタルと生物学が交わる点で新しい考え方を想起させる美しいプロジェクトだと思いました。どちらも人間がアクセスできる領域であり、人間が処理できるよりも複雑な情報を管理することができます。このため、二つの融合は、機能的かつ美的な想像力を養ううえで新しい領域が拓かれると考えています。
Pamela Golbin|進化生物学の基本概念を利用して、「デジタル擬態」はAIと自然進化の共通の特徴を探求することを目指しています。私はその詩的で影響力のあるタイトルに魅了され、この作品が物理的な体験とデジタルの特質を結びつけるだけでなく、実践的な可能性も含んでいると考えています。
Liam Wong|Digital Mimicryは、生物学とテクノロジーの交わりを魅力的に捉え、自然の進化の形態と人工的進化の形態の並行性を強調しています。Unreal EngineとVRを利用して、バーチャルとフィジカルを融合させた点で際立っています。
準グランプリ
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タイトル|Meta Blessing
説明|「Meta Blessing」は、仏教文化とNFT技術を融合させ、仏の天恵をメタバースに持ち込む画期的なプロジェクトだ。仏教のオブジェクトを現代的なスタイルで再構築し、ARに取り入れて、祝福をNFTに変換し、デジタル領域でのスピリチュアリティを探求する。
宗教とデジタルユニバースの領域を交差させる画期的なプロジェクトであり、NFTの概念を利用して、寺院の僧侶によって祝福された仏教の神聖なオブジェクトの真贋を認証し保存する。これらのNFTは、オブジェクトの真贋だけでなく、尊敬される精神的な教えとのつながりも確認可能だ。AR技術を使用して、この真贋を視覚的に示し、フィジカルとデジタルを融合させた没入型の体験を提供する。
また、このプロジェクトは仏教の古代の知恵とメタバースの現代的な能力を結びつける架け橋として機能する。スピリチュアルな資産を保存し、伝える新しい視点を提供する。そしてこれらの貴重な文化的および宗教的な実践を検証し、保護するためのNFTの可能性を示す。
拡張現実の使用は、ユーザーがインタラクティブで現代的な方法で精神的に重要な箇所に視覚的に関与できる動的な層を追加する。
物質的なものと仮想的なものの境界を曖昧にすることで、「Meta Blessing」は、技術が精神的な体験を豊かにし、デジタル世界における古代の伝統の役割について新しい考え方を促す。これは、デジタル変革の時代における宗教的実践の進化において、精神の保存と伝達の可能性を技術を通じて開く重要な一歩となるだろう。
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Instagram:https://www.instagram.com/jonylqaPortfolio:https://qiuangli.design
審査員よりコメント:Mark Foster Gage|このプロジェクトは、デジタルおよびバーチャル技術が宗教の領域で果たす役割を考えさせてくれます。30年間この分野に取り組んできましたが、宗教に関してデジタル技術の役割を本当に考えたことはありませんでした。デジタル技術は、当然のことながら、科学や技術の進歩とより多く結びついており、宗教のような一時的な人間の追求とはあまり結びついていません。しかし、私たちの歴史を振り返ると、これら二つが最終的には交わると考えています。この交わりをデザインすることは、新しい未来を想像するための魅力的な試みだと感じます。
Pamela Golbin|スピリチュアリティは予想していなかったテーマですが、メタ・ブレッシングでどのように探求されているのかに驚き、興味を持ちました。このプロジェクトは、伝統的な祝福を仮想の没入体験に取り入れることを目指しています。シームレスなエコシステムは、スピリチュアルな資産を保存し、伝えるための新しい視点を提案しています。
Liam Wong|拡張現実を利用して神聖な物体の価値を高めることにより、バーチャルとフィジカル、古代の伝統とデジタル時代を結びつける独特の体験が提供される作品です。
GEMINI Laboratory 特別賞
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タイトル|free will material
説明|質感や形状をデジタルで自由に変更できる素材。 ユーザーは素材の質感や形状を自由に変えることができる。一般的なデジタルライブラリーでは、ユーザーはあらかじめテクスチャーや形状が作られたアセットを購入し、ダウンロードするが、ここで提案するのは、デジタル上でつねに品質や形状が変化するマテリアルやオブジェクトである。
イメージはPLATEAUを用いて作成。出典:https://www.mlit.go.jp/plateau
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X :https://twitter.com/metya_sodatuyoInstagram:https://www.instagram.com/dondon_sodatsuyoWEB:https://tamura-ikuho.com
GEMINI Laboratoryよりコメント|このメタスキンは、まるで生きているかのような都市の景観を捉えており、強い印象を与えられました。都市が呼吸しているような形状は、新たな創造の触発にもつながっているように思います。さらに、見る人の手によって変化し続けるという特性を持っており、それぞれの視点や感情によって異なる意味や形を成すのかもしれません。生命体としての都市を表現するかのようなこのアプローチは、視覚的にも感情的にも心を揺さぶられ、マテリアルの可能性が感じられました。
GEMINI Laboratory 特別賞
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タイトル|If you’ll dense, I’ll dense too
説明|都市が急速に不快なほど密集するにつれて、都市環境は活気と生気を欠くようになる。
このプロジェクトは、創造性と回復力を持って都市の密集化に対応し、アートを手段として、人口密集地の課題に取り組み、緩和することを目指しています。アートと文化的表現が、都市の建物やインフラと同様に都市の構造に欠かせない存在となり、都市体験を向上させることを示唆しており、都市がより密集するにつれて、公共アートの存在と重要性も増すだろう。
「If you’ll dense, I’ll dense too(君が密集するなら、私も密集する)」という言葉は、アートの視覚的または物理的な密集化だけでなく、都市の成長と活気に満ちた相互作用をも示唆している。これは、都市開発のリズムと動きを通じた祝祭であり、都市の密集という課題を、動的な文化的および芸術的表現の機会に変えるものだ。
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Instagram: https://www.instagram.com/bryanlee.design/
GEMINI Laboratoryよりコメント|このメタスキンは、都市の急速な密集化に対応して、多様なクリエイターから収集した3Dデータを用いた表現方法を通じて、都市環境の活気と生活感を回復させる手段を提案しています。「もし密集するなら、私も密集する」というフレーズは、とても魅力的です。公共芸術の重要性を強調し、都市体験を豊かにし、デジタルデータがあふれる現代において、このアプローチが新たな文化的・芸術的表現の機会を創出するという視点が面白い。同時に、デジタルデータと都市の関係性や次世代の活用にも想像を膨らませられました。
審査員賞
◉Mark Foster Gage賞
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タイトル|Ethereal Embrace
説明|「Ethereal Embrace」は、愛と創造性のデジタル聖域。カップルが心のエッセンスで自分たちの理想的な空間を創り上げ、物理的な制約を超えて深い絆を築く。この世界では内面の美を重視し、ユーザーが互いの本質を理解し、愛を深めるための場として機能している。また、コミュニティとしての側面もあり、共に夢を共有し、協力することで、時空を超えたつながりを育む。「Ethereal Embrace」は、本物の関係と相互の尊重を育むことで、人々が深いつながりと永続する愛を体験できる場になるだろう。
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Instagram:https://www.instagram.com/paraarchitects/
Mark Foster Gageよりコメント|デジタルプロジェクトとしてはめずらしく、このプロジェクトは人間の感情能力に働きかけることを目指しています。低解像度のデジタル環境でありながら、私たちのもっとも古い人間同士の経験、つまり愛とは何かを伝えています。感情や愛が、建築やデジタル研究、そして再創造の肥沃な領域にならない理由はありません。
◉Pamela Golbin賞
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タイトル|Limited Feelings
説明|「LIMITED FEELINGS」は、フィジタルコレクションです。このコレクションは、抑圧された感情で満たされた内面の世界を表現するために、さまざまな色の強度、揮発性のある質感、軽い生地を使用している。各ピースの創作を通じて、デザインするという行為と感情を処理するプロセスに類似性を感じている。
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Instagram: https://www.instagram.com/burbush_design/Behance: https://www.behance.net/soledad_gallardoWebsite: https://soledadgallardo.com/LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/soledadgallardovillar/
Pamela Golbinよりコメント|ファッションとテクノロジーは、ようやく創造的な対話を始めたばかりです。応募作品のひとつがファッションが抱える複雑さと課題を探求していたことを嬉しく思いました。「Limited Feelings」で発表されたフィジタルコレクションは、未来のテキスタイル素材の重さ、物理的特性、デザインの可能性をうまく表現した洗練されたデジタル表現を使用して、完成したシルエットを見事に描いていました。
◉Liam Wong賞
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タイトル|過密流幽怪 – Overcrowded Specter Mirage –説明|これは、生き物のように変容する過密都市東京の地下空間での様々な目的を持つ人々の移動が、ある個人の移動によって現像された「過密流幽怪」の3Dデジタルアーカイブである。
アーカイブされた過密流幽怪たちは、ある個人が東京の地下空間の人々の雑踏を3Dスキャンしながら通り抜けたその場限りのデータのなかから拾い上げられた骨や皮をシルエットとして、骨や眼球などの身体の補完情報と動きが加わることで永遠の姿を得た。
東京の地下空間の道は、地下・地上に多様な目的を持つ、人々の行動を想定して設計され、過密都市がゆえ、非常に複雑に入り組んでいる。この空間をある個人が移動した軌跡は、過密流幽怪の背骨となり、その身体の方向性を形成する。周囲に偶然居合わせた群衆との一瞬の出会いは、その過密流幽怪の肉体となり、その身体のシルエットを形成する。
つまり、過密流幽怪とは、空間設計の際にシミュレーションされた群衆の動き、ある目的を持って移動する個人の身体、その場にしか存在しない多様な目的を持つ無数の人々からなる群衆の身体の3種類の身体が交差した場所に立ち現れる泡沫の身体といえよう。
過密流幽怪図鑑は、撮影場所、撮影者、撮影日時の状況という変数によって無限にコレクションを広げる、アーカイブをスタートしたばかりの参加型プロジェクトである。ぜひ諸君にも協力を願いたい。そしてぜひ、出会った過密流幽怪たちに、貴方にしかつけられない名前を名付けてほしい。
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X :https://twitter.com/sion_xrInstagram:https://www.instagram.com/sion_xr/
Liam Wongよりコメント|最初はプロジェクトの美学に引き込まれましたが、やがてその深層や、より大きな取り組みへと成長する可能性を感じました。このプロジェクトは、都市の見えないリズムを記録する「一瞬の出会い」に私たち全員が参加することを促しています。
審査員より総評
Mark Foster Gage|このコンペティションの審査員を務めることができ、大変素晴らしい経験となりました。多くのコンペティションは、参加者に既に確立した領域でのデザインを求めます。例えば、博物館や公園、家のデザインなどです。しかし、このコンペティションが重要だと感じたのは、新しいデザインの方法、つまり新しい考え方を再構築することを参加者に求めていた点です。私たちは、あらゆる物理的なオブジェクトがデジタル上にも対応するオブジェクトを持つ世界に急速に向かっていますが、この「ツイニング」がデザイナーとして、あるいは人間としてどのように影響を与えるかについては、まだ全く分かりません。この問題に取り組んでいる作品として、人間の感情的な観点や、宗教的な観点からアプローチしたプロジェクトを見ることができ、とても楽しむことができました。
Pamela Golbin|今回初となるGEMINI Laboratory GLOBAL DESIGN AWARDSでは、候補者たちが熱意と創造性を持って、野心的なアイデアを表現していました。この新しいデザインの分野において多くの予想外の作品が集まり、その想像力に楽しませられ、コンセプトに興味を引かれました。五感を超越するかもしれない素材から全く新しい世界観を構築するには時間がかかりますが、この賞はそれを構築する為の貴重な一歩になりました。審査員として、リアム、マーク、そしてGEMINI Laboratoryチームとの審議からインスピレーションを得ました。GEMINI Laboratoryのプラットフォームとデータライブラリの発展、この賞の取り組みがどのようにデザインの文脈で関心を引きつけ、フィジカルとバーチャルを横断した世界観を構築する原動力になるのかを見るのを楽しみにしています。
Liam Wong|幅広い応募作品を審査する審査員を務めることができ、光栄でした。各審査員は、それぞれのユニークなデザイン経験や関心に基づいた異なる視点から審査しました。私自身はビデオゲームのバックグラウンドを持っているため、バーチャルとフィジカルの要素をシームレスに融合させたプロジェクト、特にゲームエンジンを利用したプロジェクトを見ることができて嬉しく思いました。この分野での将来の革新の可能性には本当にワクワクしています。
受賞作品の詳細画像はこちらから
受賞作品の詳細は「Alt Field」にて公開中。